便秘の医学・その治療と予防

便秘は、家族や友人にも言えない症状です。便秘は、特に女性や高齢者に多くみられる症状ですが、便秘のことよく知らない人が多いです。そこで、さまざまな状況で生じる便秘についてお話します。

生理前の便秘:月経前症候群・PMSと便秘

生理前になると便秘で悩まされる女性、きっと多いことでしょう。女性のほとんどの方が経験するのが月経前症候群PMS)とよばれる生理前の諸症状で、便秘もそれに含まれる症状となります。生理の約2週間前の排卵日から生理開始までの時期に現れる身体的及び精神的な不快な症状を総称して月経前症候群PMS, Premenstrual Syndromeの略)とよばれています。月経前症候群PMS)は、月経周期にあわせて毎月発現しますので、周期的な症状の出現が特徴となります。月経前症候群PMS)として生じる便秘もまた周期的に引き起こされることとなります。月経前症候群PMS)の症状は、身体的症状と精神的症状とに分かれます。月経前症候群PMS)にはさまざまな症状が現れますが、生理前になるときまって便秘が起こるという女性もたくさんおられます。このタイプの便秘は、月経前症候群PMS)の身体的症状に分類されます。月経前症候群PMS)で引き起こされる便秘の解消に、便秘薬や下剤の使用は適当ではございません。月経前症候群PMS)による便秘は、周期的に現れますので、その都度、便秘薬や下剤を用いますと、それらのお薬の効力が次第に失われてしまい、効果が消失してしまうためです。月経前症候群PMS)の諸症状の改善には薬物療法が用いられます。身体的症状では、低用量ピル・経口避妊薬が用いられ、精神的症状には抗うつ薬がよく用いられます。しかし、何れのお薬とも、副作用として便秘が生じますので、反って、便秘が悪化してしまうことがあります。月経前症候群PMS)の存在は、まだ多くの女性に広く知られていないために、周期的な身体的あるいは精神的症状に、独り悩む女性も多いのではないかと思われます。月経前症候群PMS)の精神的症状で情緒不安定になりますと、人が変わったようにみえたりもします。生理のない男性にしてみれば、月経前症候群PMS)を理解することは、非常に難しいのかもしれません。ここでは、女性の悩みである生理前の便秘、月経前症候群PMSと便秘についてお話します。

 月経周期とは

  子宮の内側を覆っている子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに子宮口から排泄されることを月経(生理)といいます。月経は、思春期から始まり閉経までの間、ほぼ毎月、周期的に起こります。月経の初日が月経周期の始まりとされ、次の月経の前日までが、1つの月経周期となります。月経周期には21日から40日と幅があり、個人差がみられます。28日周期で月経がある女性は、10~15%と意外と少ないです。初潮直後や閉経直前の数年間は、月経の間隔が長くなります。月経周期は、卵胞期、排卵期、黄体期の3つに区分されます。また、月経周期は、脳下垂体から分泌される黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモン及び卵巣で作られるエストロゲンプロゲステロンの女性ホルモンによって調節されています。

月経周期・卵胞期

  卵胞期は、月経初日から黄体形成ホルモンの濃度が急上昇する直前までの期間で、月経周期のうち13日程度が平均的となっています。卵胞期では、卵巣内の卵胞が発達し、黄体形成ホルモンの濃度が急上昇しますと、卵胞から卵子が放出され排卵が起こります。卵胞期の初期には、胎児に栄養を供給しようとするために、子宮内膜が栄養分と水分とで厚くなっています。受精が起こらなければ、エストロゲンプロゲステロンの女性ホルモン濃度は下がり、子宮内膜が剥がれ落ちて月経・生理が始まります。月経の平均的期間は、5日間です。卵胞期の初期には、卵胞刺激ホルモンが多めに分泌され、この刺激によって3~30個の卵子が1つずつ含まれる卵胞が成長します。卵胞期後期では、卵胞刺激ホルモンの分泌量が減り、成長した卵胞のうち1個のみが発育を続けます。この1個の卵胞は、エストロゲンを分泌するようになり、それにより他の卵胞は消滅します。

月経周期・排卵

  排卵期は、黄体形成ホルモン濃度の急上昇とともに始まり、卵胞刺激ホルモン濃度も僅かに上がります。黄体形成ホルモンの刺激により、発育を続けた1個の卵胞が、卵巣の表面から飛び出て、やがてその卵胞は破裂し卵子が放出されます。排卵期は、卵子の放出で終わります。通常、卵子は黄体形成ホルモン濃度の急上昇から36時間後に放出されます。放出された卵子が受精できる期間は約12時間で、卵子が放出される前に精子が子宮内に入っていると受精する可能性が高まります。人によっては、排卵の時期に、下腹部の左右何れかの側に鈍い痛みを感じることがあります。痛みは、卵子を放出する卵巣のある側で起こります。卵巣は、下腹部の左右2箇所にありますが、排卵が起きる卵巣の規則性はございません。

月経周期・黄体期

  黄体期は、排卵期の後に続く期間で、受精しなければ、約14日間続いて次の月経直前に終わります。黄体期には、破裂し卵子を放出した卵胞が閉じて黄体とよばれる内分泌組織に変化します。そこでは、多量の女性ホルモンであるプロゲステロンを分泌します。黄体は、次の排卵で受精が起きた場合に備えて、子宮の準備を行います。プロゲステロンには、子宮内膜を厚くして、栄養分や水分を蓄える働きがあります。また、子宮頸部の粘液を濃くして、細菌や精子が子宮内に侵入するのを防ぎます。さらに、プロゲステロンの作用で、黄体期の体温はやや上昇します。黄体期の後半には、エストロゲンの分泌も上昇し、子宮内膜の成長を促します。プロゲステロンエストロゲンの分泌が上昇しますと、乳房内の乳管が大きくなり、乳房が膨らんだり、乳房を手で触れると痛みを感じることがあります。このように、月経周期の各期に依存して、女性ホルモンの分泌は、絶えず変化していることになります。

月経前症候群PMS

  この一連の月経周期において、月経前症候群PMS)は、月経周期の黄体期に起こります。月経前症候群PMS)は、月経前緊張症あるいは黄体期症候群ともよばれることがあります。月経前症候群PMS)が起こる原因については、未だに不明な点も多く、そのためさまざまな原因説があります。その中で有力視されているのが、月経周期にあわせた卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、エストロゲンプロゲステロンなどの女性ホルモン等の異常変動説です。他の原因説としては、レニン・アンジオテンシン系の異常説、セロトニンなどの神経伝達物質の異常分泌説、自律神経失調説、アレルギー説などがあります。

 月経前症候群PMS)は、身体的症状と精神的症状の2つに分かれます。毎月、月経・生理の前になると便秘になるというのは、月経前症候群PMS)の典型的な身体的症状となります。その他の身体的症状には、乳房が張る、乳房痛、下腹部痛、下腹部の膨満感、頭痛、腰痛、関節痛、むくみ、体重の増加、脚が重い、ニキビ、めまい、食欲亢進、吐き気、動悸、不眠あるいは過剰な睡眠欲などがあります。他方、月経前症候群PMS)の精神的症状には、怒りやすい、反抗的、反感、闘争的、憂鬱感、緊張感、無気力感、判断力の低下、孤独感、イライラ感、疲労感、パニック、妄想、集中力の低下、気力が続かない、涙もろい、悪夢をみる、異性に対する攻撃や暴力などがあります。

月経前症候群と便秘

  月経前症候群PMS)・生理前の便秘の原因は、主に月経周期の黄体期におけるエストロゲンプロゲステロンの異常変動によるものと考えられています。これらの女性ホルモンは、自律神経系にも作用します。自律神経系には、交感神経と副交感神経とがありますが、これらの女性ホルモンの異常変動によって、交感神経が優位となり、その一方で、副交感神経が抑制されます。副交感神経は、腸の蠕動運動の働きを促進させる機能を有していますが、この女性ホルモンの異常変動によってそれが抑制されますと、腸の蠕動運動が抑制され、便が腸管内に留まる時間が長くなります。そのため、便の水分が過剰に体内に吸収されてしまい、その結果、便が硬くなって便秘が引き起こされます。このように、月経前症候群PMS)で引き起こされる便秘は、月経周期による女性ホルモンの異常変動によって生じるものと考えられています。

 このような月経前症候群PMS)・生理前に引き起こされる便秘の解消に、便秘薬や下剤を用いることは適当ではございません。月経前症候群PMS)による便秘は、月経周期にあわせて周期的に生じますので、便秘薬や下剤もそれにあわせて周期的に使用することとなります。便秘薬や下剤は、腸管粘膜を刺激することによって排便を促します。しかし、これらの便秘薬等を繰り返し使用しますと、次第に腸管粘膜は、これらのお薬の刺激に慣れてしまい、その結果、これらのお薬が効かなくなってしまいます。便秘薬の繰り返しによる使用は、その効果が減弱し、最終的には全く効かなくなります。

 月経前症候群PMS)の諸症状の改善には、薬物療法がよく用いられます。身体的症状には、低用量ピル・経口避妊薬を用いたホルモン療法が行われます。また、精神的症状の改善には、抗うつ薬精神安定剤を用いた薬物療法が行われます。しかし、低用量ピルを用いたホルモン療法では、もともと月経前症候群PMS)を引き起こす原因となる女性ホルモンが有効成分となっているために、便秘については、むしろ症状が悪化することがあります。また、抗うつ薬抗不安薬などの精神安定剤のほとんどは、副作用として便秘が高頻度に現れることがよく知られています。これらの精神安定剤には抗コリン作用があり、そのため自律神経に作用して、腸管の蠕動運動を抑制してしまい、便秘が引き起こされます。パキシルなどのセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)についても、副作用として便秘が生じます。このように、月経前症候群PMS)のホルモン療法や薬物療法による治療は、反って、便秘を悪化させることがあります。便秘を伴わない月経前症候群PMS)に、これらの治療を行った場合、新たに薬物の副作用による便秘が引き起こされることもあります。

月経前症候群・生理前の便秘解消法

  このように、月経前症候群PMS)の身体的症状に便秘が含まれます。月経・生理の前にきまって便秘が生じるのはこの理由によるものです。また、月経前症候群PMS)の諸症状の改善には薬物療法がありますが、これに用いるお薬の副作用で便秘が悪化したり、あるいは新たに便秘が引き起こされることがあります。月経前症候群PMS)の清浄としての便秘においても、あるいは諸症状の緩和のための薬物療法による副作用としての便秘においても、何れにも共通することは、腸の蠕動運動の抑制を原因とする便秘です。硬い便となり、便秘が引き起こされます。したがって、便を軟らかくすることが、月経前症候群PMS)の便秘や薬物療法による便秘の解消につながります。

  便を軟らかくするには、水溶性食物繊維であるイヌリン食物繊維が効果的です。イヌリン水溶性食物繊維は、大腸に生息する人の健康に有益なビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の栄養源となって、それらの善玉菌を特異的に増やす作用があります。ビフィズス菌や乳酸菌は、栄養源として取り込んだイヌリン水溶性食物繊維代謝させ繁殖しますが、その時に、副産物として酢酸(お酢)、乳酸、酪酸などの有機酸が生成します。これらの有機酸は、健康に有益なさまざまな作用を有していますが、便を軟らかくする効果も併せ持っています。ですので、イヌリン水溶性食物繊維は、月経前症候群PMS)・生理前の便秘や薬物療法の副作用として生じる便秘の何れに対しても有効となります。今では、スティムフローラのように、不純物を全く含まない高純度のイヌリン水溶性食物繊維が、健康補助食品として市販されています。月経前症候群PMS)・生理前の便秘の予防と改善に、このような健康補助食品を活用することも有用です。

 月経前症候群PMS)の精神的症状である情緒不安定は、異性や職場の同僚に対して、誤解を与えてしまうかもしれません。月経前症候群PMS)の存在は、まだあまり広く知られていませんので、この症状の認識が広がることを願ってやみません。

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