便秘の医学・その治療と予防

便秘は、家族や友人にも言えない症状です。便秘は、特に女性や高齢者に多くみられる症状ですが、便秘のことよく知らない人が多いです。そこで、さまざまな状況で生じる便秘についてお話します。

甲状腺機能低下症・橋本病と便秘

700万人もの人が患っているとされる甲状腺機能低下症。甲状腺機能低下症の85%以上は女性で、甲状腺機能低下症は女性の病気であるといえます。甲状腺機能低下症はさまざまな原因で発症しますが、特に、橋本病とよばれる自己免疫疾患によって発症するケースが多いといわれています。橋本病は、慢性甲状腺炎とよばれ、40代から50代の女性に多くみられ、その年齢の女性の10%から20%が橋本病であるとされています。甲状腺機能低下症は、橋本病以外にも原因がみられ、バセドウ病の治療後においても発症することがあります。甲状腺の機能が低下しますと、全身の代謝が低下するために、さまざまな症状が現れます。消化管での代謝が低下しますと、蠕動運動などの消化管運動が低下し、その結果、便秘が引き起こされます。消化管運動の低下により、大腸内の便の移動速度が低下してしまい、そのため便の水分吸収が促進され、硬い便となって便秘が生じます。甲状腺機能低下症あるいは橋本病で生じる便秘は、慢性化しやすい特徴があり、積極的な便秘改善対策が求められます。甲状腺機能低下症や橋本病に伴う便秘対策に刺激性下剤である便秘薬は有効ではなく、天然成分の水溶性食物繊維であるイヌリン食物繊維の摂取が最も有効であるとされています。甲状腺機能低下症の全身的なさまざまな症状は、更年期障害などの他の病気と間違われやすく、自らが甲状腺機能低下症であることを知らない女性も多いです。ここでは、甲状腺機能低下症・橋本病に伴う便秘についてお話します。 

甲状腺とは

 甲状腺は、喉仏の下方にある重さ約15グラム程度の小さな臓器ですが、甲状腺ホルモンを分泌するという重要な働きがあります。甲状腺ホルモンには、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)とよばれる2種類のホルモンがあります。甲状腺ホルモンは、サイログロブリンという糖たんぱく質が、血液中のヨードと結合し、その後、分解されてアミノ酸チロシンが2つ縮合し、分子内がヨード化された化学構造を有しています。原発事故で甲状腺放射能が蓄積されるのは、放射性ヨードが血液を介して、サイログロブリン甲状腺ホルモンに取り込まれるためです。甲状腺ホルモンは、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって、甲状腺から血液中に分泌され、全身の臓器や組織に広がります。全身の臓器や組織に分布した甲状腺ホルモンは、細胞の呼吸やエネルギーの産生を高め、各臓器や組織の新陳代謝に重要な働きを有しています。ですので、甲状腺ホルモンの分泌が過剰であっても、あるいは不足しても、さまざまな全身的症状が現れます。 

甲状腺の病気

  甲状腺の病気は、大きく分けて2種類あります。1つは、甲状腺ホルモンの分泌機能に異常が生じる場合です。このホルモン分泌異常は、さらに2種類に分かれます。甲状腺ホルモンの分泌が低下する甲状腺機能低下症と、逆に、甲状腺ホルモンの分泌が増大する甲状腺機能亢進症です。2つ目は、甲状腺がんなどの腫瘍性疾患です。

  甲状腺機能低下症については次のセクションで詳しくご説明いたします。甲状腺機能亢進症は、別名バセドウ病ともいわれます。甲状腺の働きが活発な状態となり、甲状腺から甲状腺ホルモンが多量に分泌し過ぎて、全身の細胞における新陳代謝が異常に高まる病気です。甲状腺ホルモンの分泌が高まるために、血液中の甲状腺ホルモンは高値を示します。バセドウ病は、20代から40代で発症することが多く、その80%以上は女性でみられる病気です。女性の100人に1人はバセドウ病であるといわれていますので、バセドウ病も決して稀な病気ではないということになります。甲状腺のある首の回りが太く腫れあがります。

 甲状腺腫瘍には、良性腫瘍と悪性腫瘍とがあります。いずれも、首にしこりがあったり、首が腫れて大きくなったりします。痛みをあまり感じないために、首の腫れを他人が発見する場合も多いです。このような外見的徴候はバセドウ病と同じです。甲状腺がんの80%以上は、分化癌とよばれるがんであり、予後は比較的良いとされています。甲状腺腫瘍が、なぜ発症するのかについては、ほとんど解明されていません。しかし、少なくとも、放射性ヨードは、甲状腺がんを引き起こす原因であることは明らかとなっています。原発事故で大量の放射性ヨードが大気中に拡散しましたが、今後、この事故によってもっとも留意すべきことは、特に、子どもを中心とした甲状腺がんの発症を追跡することにあるといわれています。ロシアのチェルノブイリ原発事故では、何十年も経ったのちに、甲状腺がんの増加が認められています。

甲状腺機能低下症

  甲状腺の病気の中で、最も患者数が多いといわれているのが甲状腺機能低下症です。バセドウ病などの甲状腺機能亢進症とは逆に、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが減少するために発症する病気です。甲状腺ホルモンの分泌が低下しますと、全身の代謝が低下あるいは抑制され、体のすべての機能が低下します。精神神経機能が低下しますと、眠気、抑うつ、全身倦怠感、無気力感、疲労感、食欲低下、冷え性、記憶障害などが生じます。全身のむくみも生じます。普通のむくみとは異なり、指で押してもへこみが残らないむくみとなります。皮膚は乾燥し、毛が抜けたりします。喉の声帯がむくみ声がかれたりします。いびきをかくことも多くなります。また、心臓機能の低下により、脈が遅くなったり、食欲がないのにむくみで体重が増えたりします。甲状腺機能低下症は、月経過多や無月経といった生理不順の原因にもなります。

 甲状腺機能低下症は、神経組織、心臓、皮膚、卵巣などの生殖器の他に、小腸や大腸などの消化管に対しても影響を及ぼします。甲状腺ホルモンの分泌が低下しますと、消化管の代謝が低下します。消化管は、寝ている間においても、絶えず動いています。これを消化管の蠕動運動といいます。運動を行うためには、代謝によって生じるエネルギーが必要となりますが、甲状腺機能低下症では、このエネルギーを生む代謝が抑制されるために、結果として、消化管の蠕動運動が抑制されることとなります。消化管の蠕動運動は、食べた物を肛門まで運ぶ重要な働きがあり、これによって、排便が行われることになります。しかし、甲状腺機能低下症で蠕動運動が抑制されますと、食べた物が大腸などの消化管の中に滞留してしまい、そのため便秘が引き起こされることとなります。大腸内の便の移動速度が低下することにより、便の水分が過剰に吸収され、硬い便となって排便が困難となり便秘が引き起こされるのです。甲状腺機能低下症では、このようなメカニズムで便秘が生じるのです。このような甲状腺機能低下症も、甲状腺機能亢進症と同様に、そのほとんどが20代から40代の女性に多くみられます。

甲状腺機能低下症の原因

  甲状腺機能低下症の原因として最も多いのが、橋本病あるいは慢性甲状腺炎とよばれる原発性の自己免疫疾患によるものです。次に多い原因は、甲状腺機能亢進症であるバセドウ病の放射性ヨード治療を行った後に生じるものです。バセドウ病は、甲状腺機能が亢進した状態ですので、その治療は、亢進した甲状腺の機能を抑制することになります。治療法には、放射性ヨウ素治療、薬物療法甲状腺摘出外科治療などがありますが、亢進した機能の抑制が過剰になりますと、反って、甲状腺機能低下症が発症してしまうことがあります。また、慢性的なヨウ素の過剰摂取は、甲状腺機能低下症の発症原因となることがよく知られています。ヨウ素は、海藻類、特にヒジキなどに多量に含まれますが、健康のためという理由で過剰摂取しますと、反って、甲状腺機能低下症を誘発させる原因となりますので注意が必要です。また、原発事故の時、非放射性のヨウ素を配布することがニュースとなりましたが、これもまた、反復した非放射性ヨウ素の摂取は、甲状腺機能低下症を発症させる原因となります。

橋本病

  橋本病は、自己免疫疾患の一種で、慢性甲状腺炎ともよばれています。私たちの体は、自分のものか他人のものか、あるいは細菌やウイルスのように体外の異物であるかを認識する能力を備えています。外部から他人の血液や細菌等が侵入してきた場合、これを排除するために防衛手段として抗体とよばれる糖たんぱく質が生成され、体外異物の除去を行います。また、白血球の一部は、直接、体外異物を攻撃し、体内への侵入を防ぎます。通常、これらの抗体や白血球は、自分のもの(自己の蛋白質、細胞、組織、臓器など)は、異物として認識しません。ところが、「自分のもの」であるのにも係らず、それらを異物として認識してしまい、自分の抗体で自分の細胞、組織や臓器を攻撃してしまうことがあります。自らの白血球によっても、自らの細胞や組織を攻撃する場合もあります。これらを自己免疫反応といい、これによって生じる病気を自己免疫疾患といいます。橋本病においても、甲状腺という臓器に対する自己抗体が作られたり、あるいは自己の白血球の一部が、自己の甲状腺を攻撃する自己免疫疾患の一種となります。橋本病では、甲状腺組織の細胞が破壊され、それにより甲状腺ホルモンの分泌が低下し、甲状腺機能低下症が発症するのです。

 橋本病あるいは甲状腺機能低下症のいずれにおいても、その症状の現れ方が、更年期障害などの症状に類似しているために、余程、首が大きく腫れない限り、多くの女性は、それらの病気を放置しているとの報告があります。700万人中500万人の方は、自分が甲状腺機能低下症あるいは橋本病であることを認知していないと指摘する報告もあります。甲状腺機能低下症あるいは橋本病は、簡単な血液検査で診断することができますので、病院にて検診を受けることがとても大切です。

 例えば、甲状腺機能低下症あるいは橋本病の血液診断検査として、遊離サイロキシン(FT4検査、甲状腺ホルモン検査のひとつで、一般に、この値が高ければ甲状腺機能亢進症、低ければ甲状腺機能低下症と診断されます)、遊離トリヨードサイロニン(FT3検査、甲状腺ホルモン検査のひとつで、この値が高ければ甲状腺機能亢進症、低ければ甲状腺機能低下症と診断されます)、甲状腺刺激ホルモン(TSH検査、脳下垂体から分泌される甲状腺を刺激するホルモンで、血液中の甲状腺ホルモンが高値になると分泌が低下し、血液中の甲状腺ホルモンが低値になると分泌が亢進されます。血液中の甲状腺刺激ホルモンを測定することによって、間接的に甲状腺の機能を判定することができます)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体、甲状腺ペルオキシダーゼに対する抗体検査です。橋本病・慢性甲状腺炎バセドウ病で高値となります)、抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体、甲状腺特有のたんぱく質であるサイログロブリンに対する抗体検査です。橋本病・慢性甲状腺炎バセドウ病で高値となります)、TSHレセプター抗体(TRAb、甲状腺膜細胞上のTSH受容体に対する自己抗体です。バセドウ病の原因物質で、その病気の病勢を診断します)、サイログロブリン(Tg、甲状腺腫瘍マーカーで、良性腫瘍でも悪性腫瘍でも高値を示します)、カルシトニン(カルシトニンは、主に甲状腺で産生されるホルモンの一種であり、甲状腺がんなどの腫瘍マーカーとして測定されます)、などがあります。これらの血液臨床検査を適宜組み合わせて、甲状腺機能低下症、橋本病、あるいは甲状腺機能亢進症であるバセドウ病甲状腺腫瘍の診断が行われます。 

甲状腺機能低下症・橋本病に伴う便秘

  甲状腺機能低下症や橋本病では、その多くの患者に便秘がみられます。その便秘の特徴としては、慢性的であること、また硬い便による排便困難となる便秘です。

 甲状腺機能低下症や橋本病で発症する便秘の解消に、コーラックなどの刺激性下剤である便秘薬や下剤の使用は効果的ではありません。便秘薬や下剤は、大腸の粘膜を刺激し、これによって大腸組織が収縮することによって排便が促進されます。しかし、甲状腺機能低下症や橋本病では、大腸組織のエネルギー代謝が低下しているために、大腸組織の収縮力が低下した状態となっているために、刺激性便秘薬などで大腸粘膜を刺激しても、大腸の収縮運動能は起こりにくく、排便が促進されないこととなります。また、刺激性便秘薬の反復使用は、習慣性となって、その効果が減少します。非刺激性の便秘薬である酸化マグネシウムの処方も、甲状腺機能低下症や橋本病の便秘改善に有用ではございません。酸化マグネシウムは、便の量が増えることによって排便を促す便秘薬です。しかし、酸化マグネシウムには、硬くなった便を軟らかくする効果はなく、単なる「便のかさまし」程度の効果しかありませんので、大腸の運動機能が低下した甲状腺機能低下症あるいは橋本病で生じる便秘には効果が期待できません。むしろ、大腸運動機能が低下した甲状腺機能低下症や橋本病では、服用した酸化マグネシウムが大腸内に留まり、腸閉塞や腸捻転などの重大な副作用が生じる可能性があります。さらに、甲状腺機能低下症あるいは橋本病の患者さんが、便秘目的で酸化マグネシウムを服用しますと、服用した酸化マグネシウムが大腸内に長時間滞留することとなり、その結果、酸化マグネシウムを構成するマグネシウム成分が大腸から吸収されてしまい、重篤な高マグネシウム血症が発現する確率が高まります。厚生労働省は、酸化マグネシウムの服用による高マグネシウム血症の発現とその警告を製薬会社に伝達しています。なぜならば、非刺激性便秘薬として使用されている酸化マグネシウムを服用した便秘患者数例に死亡の報告があったためです。

 それでは、甲状腺機能低下症あるいは橋本病で生じる便対対策は、どのようにしたらよいのでしょうか。甲状腺機能低下症あるいは橋本病の便秘の特徴は、「慢性便秘」と「硬い便」の2つです。その2つに対する対策が便秘対策として求められることとなります。その2つを同時に解消させることができのは、天然成分であるイヌリン水溶性食物繊維です。イヌリン水溶性食物繊維は、消化管の蠕動運動が抑制された甲状腺機能低下症あるいは橋本病で生じる便秘にとても有効な天然素材となります。イヌリン水溶性食物繊維は、ゴボウ、アスパラ、タマネギ、ニンニクなどの根菜類に含まれる食物性の食物繊維です。この水溶性食物繊維は、大腸内に生息するビフィズス菌、乳酸菌や酪酸菌などの善玉菌の特異的な栄養素となって、それらの善玉菌を育成します。これらの善玉菌には、大腸内の便を軟らかくする効果があり、便通を改善させる効果に優れています。イヌリン水溶性食物繊維は、刺激性便秘薬とは異なり、大腸粘膜を刺激しないので、腹痛を伴うことなく、自然な排便が促進されます。また、イヌリン水溶性食物繊維は、大腸菌などの悪玉菌の栄養源にはならないので、腸内環境が特異的に改善する効果が報告されています。しかし、ゴボウなどの根菜類や野菜類に含まれるイヌリン水溶性食物繊維の量は極めて少なく、イヌリン水溶性食物繊維を根菜類あるいは野菜類から十分な量を摂取することが困難であるという欠点があります。とはいえ、最近では、スティムフローラのように、不純物を全く含まない極めて高純度のイヌリン水溶性食物繊維が健康補助食品として市販されていますので、甲状腺機能低下症あるいは橋本病に伴う便秘対策として活用することができます。一般の便秘薬は、反復使用によって、その効果が消失することが明らかとなっていますが、イヌリン水溶性食物繊維は天然素材であり、その反復的な摂取によっても、便秘改善効果が消失しないという特徴があります。 

 甲状腺機能低下症あるいは橋本病の治療では、一生涯、甲状腺ホルモン剤を飲み続けなければなりません。甲状腺機能低下症あるいは橋本病に伴う便秘についても、繰り返し、長期間にわたり、使えることのできる便秘対策が求められます。そのような観点から、甲状腺機能低下症あるいは橋本病で生じる便秘対策として、天然素材のイヌリン水溶性食物繊維が最も最適であるといえます。

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水溶性食物繊維「スティムフローラ」

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