便秘の医学・その治療と予防

便秘は、家族や友人にも言えない症状です。便秘は、特に女性や高齢者に多くみられる症状ですが、便秘のことよく知らない人が多いです。そこで、さまざまな状況で生じる便秘についてお話します。

大人ニキビは便秘が原因

大人ニキビは、ニキビ薬では治りません。大人ニキビの原因は、思春期ニキビの原因とは異なります。大人ニキビの主な原因は、古い皮膚の角質層の蓄積とお肌の乾燥です。お肌の代謝が悪くなることで、角質層が毛穴を塞いでしまい、それによってアクネ菌が繁殖して大人ニキビが生じます。大人ニキビの原因は、お肌細胞の代謝に影響を及ぼすストレス、睡眠不足、女性ホルモンの乱れ、栄養バランスの乱れなどが指摘されていますが、女性の大人ニキビの最大の原因は、女性に多い便秘です。女性の大人ニキビの原因のほとんどが、便秘によるものです。便秘薬の適応症は、便秘そのもの以外に、「便秘に伴う肌荒れ・吹出物」も含みます。便秘薬は、大人ニキビを含む肌荒れに効くということになります。この便秘薬の適応症からも、大人ニキビと便秘とは密接に関連していることがわかります。大人ニキビの治療は、皮膚疾患として捉えるのではなく、腸内環境の状況による胃腸疾患として捉えることが重要です。便秘薬は、大人ニキビに対して有効ではなく、腸内環境を改善することのできるイヌリン水溶性食物繊維が大人ニキビの改善に有効です。ここでは、便秘が原因となる大人ニキビについてお話します。 

大人ニキビと思春期ニキビの違い

  ニキビには、大人ニキビと思春期ニキビとがあり、ニキビができる原因とニキビができる場所もそれぞれ異なります。

  大人ニキビは、思春期を過ぎて大人になってからできるニキビのことをいいます。大人ニキビができる原因は、人によってさまざまです。不規則な食生活、睡眠不足、飲酒、喫煙、ストレス、ホルモンバランスの乱れ、化粧品やスキンケアで用いられる化学成分等、さまざまな要因で大人ニキビができると考えられています。その中で、大人ニキビができる原因として最も有力な説として考えられているのが、皮膚のターンオーバー(皮膚の新陳代謝サイクル)の乱れです。皮膚のターンオーバーとは、皮膚細胞の回転サイクルのことをいいます。人の皮膚の細胞は、約28日間の周期で新しい細胞と古い細胞が入れ替わります。このリズムが乱れますと、古くなった角質層が溜まってしまい、角質層全体が厚くなって毛穴が狭くなり詰まってしまいます。そのため、毛穴に生息していたアクネ菌(ニキビの原因菌)が角質層の中で繁殖し、ニキビができてしまうのです。このようにしてできたニキビを一般に大人ニキビといいます。

 他方、思春期ニキビとは、10代の思春期にできるニキビです。特に、中学生や高校生に思春期ニキビが多くみられます。このような成長期では、体をつくるために盛んに成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンには、皮脂腺を刺激する作用もあり、これによって皮脂が過剰に分泌されます。皮脂の分泌量が増えますと、皮脂が毛穴に詰まりやすくなり、そのためニキビの原因となるアクネ菌が繁殖しやすくなるのです。20代前後になりますと、このホルモンバランスが整って、思春期ニキビはできなくなります。このように、大人ニキビと思春期ニキビは、そのできる原因とメカニズムが異なります。また、ニキビのできる体の部位についても、大人ニキビと思春期ニキビとで異なります。大人ニキビは、顎、フェイスライン、首筋にかけてできます。他方、思春期ニキビは、皮脂の分泌が盛んな額、鼻、頬にできやすいです。大人ニキビと思春期ニキビは、そのできる場所も異なります。

 一般に、大人ニキビの対策としては、生活習慣全般の見直し、ストレスのない規則正しい生活、健康な食生活が重要となります。大人ニキビでは、角質層の中でアクネ菌が繁殖しますので、洗顔等の対策はあまり効果が上がりません。他方、思春期ニキビの対策では、皮脂分泌に対する対策が重要となり、洗顔等が有力な対策となります。

大人ニキビと便秘

  大人ニキビで悩んでいる女性もきっと多いことでしょう。ニキビ薬を塗っても、なかなかニキビが治らない女性も多いです。女性の大人ニキビの最大の原因は便秘です。便秘は女性に多いのですが、便秘が続きますと、お肌にもさまざまな形でその影響が現れます。大人ニキビのある女性の多くは、同時に、便秘でもあります。大人ニキビは、代表的な便秘症状の1つとなるのです。ニキビ以外にも、便秘は、肌のくすみ、肌荒れ、吹出物などの原因となります。

 便秘では、大腸内に便が長時間にわたり留まっているために、本来なら排泄されるべき老廃物や毒素(アンモニア,硫化化合物、インドール化合物等)が蓄積されている状態となっています。大腸の働きの1つに水分吸収がありますが、便秘で便が大腸内に長時間留まりますと、過剰な水分吸収が生じて便が硬くなり、腸内環境が悪化します。また、便秘になりますと、自律神経の乱れや全身の血流の悪化が生じます。さらに、大腸内で生成した毒素が体内に吸収され、イライラ感、食欲不振、疲労感、肩こり、冷え症、頭痛、吐き気などの諸症状が現れます。大人ニキビを含むお肌のトラブルは、便秘による血流の悪化(血行不全)と大腸で生成する毒素によるものです。血流が悪化して毒素が集積されますと、皮膚の細胞の新陳代謝が抑制されてしまい、古い角質層が蓄積されてしまいます。そのため、便秘は、大人ニキビの原因となるのです。また、便秘を原因とする大人ニキビは、ニキビ薬ではなかなか治りません。大人ニキビでは、厚い角質層の下でアクネ菌が繁殖しますが、厚い角質層がニキビ薬の有効成分の浸透を阻害するために、ニキビ薬の効果が現れないのです。なお、便秘で生じる毒素についてですが、これは主に食べた食事に含まれる未消化蛋白質大腸菌などの悪玉菌によって分解代謝される過程で生じる化学成分で、尿毒素としても知られている成分です。現在までのところ、約300種以上の毒素成分が同定されています。

大人ニキビの治し方・便秘薬は有効か?

  大人ニキビの治療は、医学的には皮膚科領域ではなく内科領域、とりわけ胃腸科領域が対象となります。ニキビは皮膚にできるので、病院に行くのならば皮膚科だと思われている方も多いと思われますが、大人ニキビの医療機関における治療は、皮膚科よりも内科が適している特徴があります。他方、思春期ニキビの治療の場合には、内科よりも皮膚科が適しているのです。大人ニキビの治療で重要なことは、便秘を解消し、なおかつ、腸内環境を整えることが最善の治療となります。ここで大切なことは、単に便秘の解消だけでは不十分であり、同時にビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌等の善玉菌に富んだ大腸内の腸内環境の改善が、大人ニキビの治療に必要不可欠となることです。

 便秘の解消には、しばしば刺激性下剤である便秘薬が用いられます。ここで、代表的な便秘薬の「効能・効果」についてみてみましょう。効能・効果とは、その医薬品が効果を有する病気の種類(病名)やその症状を示したものであり、厚生労働省の審査によって認められたものです。タケダ漢方便秘薬の効能・効果は、「便秘、便秘に伴う腹部膨満感・ふきでもの(にきび)・腸内異常発酵・痔・頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・食欲不振(食欲減退)などの症状の緩和」とされています。コーラックなどの他の便秘薬についても、同様の効能・効果が示されています。これらの便秘薬の効能・効果からもわかりますように、便秘薬は、「ふきでもの(ニキビ)」に効くということが明らかとなっています。つまり、「ニキビ」は便秘の症状であるという位置づけであることが、医学・薬学的に公知となっているのです。これは、「便秘が治ればニキビもまた治る」という意味なのです。

 しかし、このような便秘薬は、はたして大人ニキビの治療に最適な治療法であるといえるのでしょうか。第一に、大人ニキビは再発を繰り返します。ニキビが治っても、ニキビがまたできることが多いです。他方、刺激性下剤である便秘薬は、それを繰り返し用いますと、次第に効果が減弱することが知られています。よって、繰り返す大人ニキビに、その都度、便秘薬を用いますと、次第に便秘改善の効果がみられなくなり、その結果、大人ニキビに対する効果も消失することになるのです。第二に、酸化マグネシウムを含む便秘薬には、ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などの善玉菌が多く生息する腸内環境を実現する効果はございません。後で述べるように、大人ニキビの治療には、皮膚細胞の新陳代謝(ターンオーバー)が必要不可欠となるのですが、便秘薬にはそのような効果はないのです。以上から、大人ニキビの治療に、便秘薬の使用は不十分であるといえます。特に、大人ニキビを再発し、繰り返す人にとっては、他の治療法についても考える必要があります。

 大人ニキビの治し方・便秘の解消と腸内環境の改善

  大人ニキビの根本治療は、皮膚疾患としてのニキビではなく、体内・腸内環境の改善としての治療となります。

 赤ちゃんの皮膚から高齢者の皮膚まで、皮膚(角質層)の入れ替わりである新陳代謝に関与しているのが、ビオチンとよばれるビタミンです。ビオチンは、ビタミンB群に分類される水溶性ビタミンの一種であり、ビタミンB7又はビタミンHともよばれています。ビオチンは、皮膚細胞の代謝回転を促進させる生理活性物質として働き、皮膚の維持に重要な役割を果たしています。大人ニキビ、肌荒れ、湿疹、吹出物、加齢に伴う皮膚の老化、しわ、皮膚のたるみ等、ビオチンは皮膚組織の維持・管理に必要不可欠な成分であるといえます。老化現象として、最初に現れるのが皮膚の老化現象(しわ、しみ等)ですが、これは、ビオチンが欠乏することによって生じることが明らかとなってきました。ビオチンは、大人ニキビなどの肌荒れの原因のみならず、加齢による皮膚の老化にも重要な働きがあることが知られるようになってきました。

 では、ビオチンは、どのようにして体内に存在し、全身、特に皮膚組織に分布するのでしょうか。ビオチンは、通常、私たちが食べる食物の中にはほとんど含まれていません。ただし、卵黄と大豆には、ビオチン成分を含みますが、蛋白と強固に結合しているために、消化管から吸収されることなく、ほぼその全量が糞便中に排泄されてしまいます。また、ビオチンは、体内の組織では生成されないことも明らかとなっています。とはいえ、私たちの体の中には、ビオチンが確かに存在していることが医学的に証明されています。では、この矛盾についてですが、実は、ビオチンというビタミンは、大腸内に生息するビフィズス菌などの善玉菌が、副代謝産物として産生し、それが大腸から吸収されて全身に分布しているのです。つまり、皮膚の新陳代謝に欠かせないビオチンは、大腸内の腸内細菌(善玉菌)でつくられているということになります。

 便秘は、善玉菌が少ない腸内環境で生じます。ビフィズス菌などの善玉菌が少ない便秘の状態では、当然のことながら、ビオチンの産生量が低下することになります。その結果、皮膚細胞の新陳代謝が遅延し、皮膚の角質層が溜まることになります。大人ニキビの原因が、皮膚角質層の肥厚ですが、その原因の根源は、ビオチンの欠乏、すなわち、ビフィズス菌などの善玉菌が少ない腸内環境の悪化であるといえます。大人ニキビは、一見しますと、皮膚の病気であるとみえるのですが、その原因は、皮膚ではなく、大腸の腸内環境がその原因の根源であるということになります。便秘で大人ニキビなどの肌荒れが生じるのは、便秘で大腸内の善玉菌が減少し、そのため皮膚細胞の新陳代謝促進成分であるビオチンの産生が低下することによるものと考えられます。

 大人ニキビの治し方のポイントは、便秘の解消と腸内環境の改善の2つにあります。この2つの点を同時に解決する必要があります。便秘薬は、便秘の解消に有効ですが、腸内環境を改善させる効果はございませんので、大人ニキビ対策としては不十分であるといえます。便秘の解消と同時に腸内環境を改善させる方策としては、水溶性食物繊維であるイヌリン水溶性食物繊維がとても効果的です。イヌリン水溶性食物繊維は、ビフィズス菌などの善玉菌の栄養源となって、善玉菌のみを特異的に増やし、その結果、腸内環境が改善されます。これをイヌリン水溶性食物繊維によるプレバイオティック効果といいます。イヌリン水溶性食物繊維の効果は、オリゴ糖とは異なり、大腸菌などの悪玉菌は増やさないので、理想的な腸内環境改善作用であるといえます。オリゴ糖は、善玉菌を増やす作用がありますが、同時に、大腸菌などの悪玉菌も増やす作用もあり、そのため腸内環境を改善させる効果はほとんどないといわれています。イヌリン水溶性食物繊維によって大腸内のビフィズス菌などの善玉菌が増えますと、その菌の作用によって、硬くなった便が軟らかくなり、便秘が解消されて、自然な排便状態となります。さらに、イヌリン水溶性食物繊維で大腸内のビフィズス菌などの善玉菌が増えることにより、皮膚細胞の新陳代謝に関与するビオチンの産生が高まり、大人ニキビの治療的な改善効果が期待できるのです。今では、スティムフローラのように、不純物を全く含まない極めて高純度のイヌリン水溶性食物繊維が健康補助食品として市販されています。大人ニキビの原因となる便秘の予防と改善に、このような健康補助食品を活用することも有用です。

 大人ニキビは、単に皮膚疾患として捉えるのではなく、大腸内の腸内環境を原因とした皮膚疾患として捉えるべきでしょう。このような考え方は、大人ニキビの治療法のあり方として、とても重要となります。プレバイオティック効果に優れたイヌリン水溶性食物繊維は、大人ニキビの対策にとても有用な食品成分となります。大人ニキビは、再発を繰り返しますので、長期に用いることができる対策が、大人ニキビの治療に必要不可欠であるといえます。

f:id:Marisho:20190523122552j:plain

水溶性食物繊維「スティムフローラ」

根菜類に含まれる貴重な天然成分であるイヌリン水溶性食物繊維は、腸内環境を改善し、自然な排便を促します。排便で苦痛を伴う方、お通じが毎日ない方、宿便気味の方、便が硬く排便が困難な方など、便の排泄にトラブルを抱えている方に、とても有用な天然成分です。スティムフローラは、この機能性の高い水溶性食物繊維を高純度(99%以上)に精製し、飲みやすいよう粒にした健康補助食品です。不純物を全く含まないので、病気により食事制限をしている方にも最適です。市販の食物繊維とは異なり、水に溶かさず、そのままお召し上がりいただけます。快適な、毎日のお通じのために!

http://www.stimflora.jp/