便秘の医学・その治療と予防

便秘は、家族や友人にも言えない症状です。便秘は、特に女性や高齢者に多くみられる症状ですが、便秘のことよく知らない人が多いです。そこで、さまざまな状況で生じる便秘についてお話します。

抗がん剤治療に伴う便秘

抗がん剤の副作用として便秘が生じることがあります。便秘を起こしやすい抗がん剤には、オンコビン、ビンブラスチン、ナベルビンなどがあります。これは、抗がん剤によって末梢神経や自律神経が障害されるために、排便を促す腸の蠕動運動が抑制されるためです。また、抗がん剤ではないのですが、抗がん剤の副作用である吐き気や嘔吐を止める制吐剤によっても便秘が生じます。便秘を引き起こす代表的な制吐剤は、ゾフラン、カイトリルなどのHT3受容体拮抗剤です。さらに、がんの痛みを抑える鎮痛剤によっても便秘が生じます。抗がん剤あるいはその副作用を軽減させるために処方される薬剤等の直接的な影響だけでなく、抗がん剤治療による精神的ストレス、抗がん剤治療による消化器症状のために食事量や摂取水分量が減少する、あるいは抗がん剤治療による体のだるさからベッドで横になる時間が長くなる,等も便秘を引き起こす原因となります。抗がん剤治療で生じる便秘は、腸管の麻痺をきたし、生命に危険が及ぶ腸管閉塞を引き起こすこともあります。抗がん剤治療に伴う便秘は、複合的な要因から、下剤だけではコントロールすることが難しく、他の便秘対策、とりわけ便秘にならないようその予防が重要となります。抗がん剤治療中は、さまざまな要因で便秘が起こります。それが原因で吐き気や食欲不振がひどくなり、抗がん剤治療そのものの効果も上がらなくなることもあります。抗がん剤治療に伴う便秘には、天然成分のイヌリン水溶性食物繊維が効果的です。ここでは、抗がん剤治療に伴う便秘についてお話します。

 抗がん剤治療とは

  がんの抗がん剤治療は化学療法ともよばれ、手術及び放射線治療と並んで、がん治療の3本柱の1つとなっています。がん細胞が体の限られた部位(局所)にのみ存在する場合、手術や放射線治療が適用されます。しかし、がん細胞が全身に転移した場合には、抗がん剤治療のみが唯一のがん治療法となります。

 抗がん剤とは、がん細胞が分裂増殖(がん細胞が増えること)する過程に作用し、がん細胞の増殖を抑制する薬剤のことをいいます。抗がん剤には、がん細胞が成長するのに必要な物質の生合成を阻害したり、あるいはその逆にがん細胞の成長因子を過剰に生合成させることによって、最終的にがん細胞の増殖を抑制し、がん細胞の死滅を促進させる作用があります。

 抗がん剤治療が行われる目的は、①がんの病巣を完全に破壊して完治を目指すこと、②手術前に抗がん剤を投与し、がん病巣を小さくすることで、手術によるがん治療効果を最大限にすること、③がん手術後のがん細胞の移転や再発を抑制すること等,がん治療の主体となるもの及び他のがん治療法の効果を補助する役割があります。がんには、さまざまな種類がありますが、手術などの治療法が対象とならない白血病悪性リンパ腫などの血液がんでは、抗がん剤治療が第一選択となり、抗がん剤の果たす役割は大きいものとなります。ただし、抗がん剤治療で腫瘍の縮小がみられても、完全に消失しない場合もありますので、「抗がん剤が効く」ということは、必ずしも「治ること」を意味しないので、この点についてはよく理解することが大切です。

 抗がん剤には、内服薬と注射剤の2種類があります。内服薬及び注射剤の抗がん剤を注入しますと、抗がん剤の主成分が全身に分布し、そのため副作用が強く現れることがあります。そこで、肝臓がん治療のように、カテーテルを肝臓の動脈に挿入し、そこから抗がん剤を注入する局所投与法が用いられることがあります。このような抗がん剤の局所投与法では、がん組織に高濃度の抗がん剤を分布させることができるので、治療効果が高まり、また抗がん剤の全身への分布が抑えられるために、副作用の発現が少なくなる利点があります。抗がん剤を用いた実際の治療では、通常、抗がん剤を投与する治療日と投与しない日を組み合わせて行われます。抗がん剤を投与する治療期間は1~2週間程度が設定され、抗がん剤を投与しない休薬期間も1~2週間設定されます。これを交互に行って、がん治療を進めていくことになります。抗がん剤を用いたこのような治療法は、必ずしも入院の必要がなく、外来診療・治療が可能となるため、日常生活を過ごしながら、がん治療を受けられる利点があります。

 抗がん剤の種類

  抗がん剤には、代謝拮抗剤、プラチナ製剤、アルキル化剤、ホルモン剤、植物アルカロイド、抗がん性抗生剤、分子標的薬、生物学的応答調節剤などさまざまな種類があり、単独又はそれらを組み合わせて治療が行われます。また、がんの種類によって、用いられる抗がん剤が異なることがあります。例えば、肺がんに対する抗がん剤治療では、シスプラチンやカルボプラスチンなどのプラチナ製剤に、他の抗がん剤を加えた2剤併用療法が標準的な治療法となっています。乳がん抗がん剤治療では、シクロホスファミド、メトレキサート、フルオロウラシルの3剤を組み合わせたCMF療法が行われます。子宮がんや卵巣がんでは、主にシスプラチンが用いられます。脳腫瘍では、アルキル化剤であるニムスチンやラニムスチンあるいはテモゾロミドなどの抗がん剤が用いられます。食道がん抗がん剤治療では、シスプラチンとフルオロウラシルの組み合わせによるPF療法が行われ、胆嚢がん及び膵臓がんでは、ゲムシタビンが用いられます。胃がんでは、シスプラチンやイリノテカンが用いられます。大腸がんに有効な抗がん剤は、フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチン、テガフールなどです。膀胱がんは、抗がん剤に比較的効きやすく、また前立腺がんでは、ドセタキセル抗がん剤が有効です。白血病では、抗がん剤がよく効くために、各種の抗がん剤が治療に用いられます。多発性骨髄腫の抗がん剤治療では、メルファランやシクロホスファミドが用いられます。最近では、がん抗体を用いた免疫治療も行われています。

 抗がん剤治療の副作用

  抗がん剤を用いた治療では、さまざまな副作用が発現します。一般に、抗がん剤は、活発に増殖する細胞に対して治療効果を及ぼすために、がん細胞のみならず、腸管、骨髄、皮膚あるいは毛母細胞など、細胞が分裂し増殖することで生体としての機能を維持している正常な組織や臓器にも影響を及ぼし、そのため副作用が発現することとなります。抗がん剤の副作用は、正常細胞までも障害を与えてしまうことにより発現することになります。

 抗がん剤で生じる主な副作用には、脱毛、倦怠感、貧血、感染症口内炎、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、アレルギー及び便秘などがあります。脱毛は、毛髪をつくる細胞が障害をうけることにより生じます。頭髪や眉毛の脱毛が起きます。脱毛は、抗がん剤治療開始後2~3週間で始まります。倦怠感は、抗がん剤治療を重ねるにつれて強くその症状が現れます。抗がん剤治療終了後においても、長期にわたり持続することがあります。貧血は、抗がん剤治療によって赤血球やヘモグロビンの量が減ることによって生じます。感染症は、各抗がん剤に共通する副作用です。抗がん剤治療によって骨髄の造血細胞が障害をうけるために白血球が減少し、それにより免疫力が低下して感染症が生じます。口内炎は、抗がん剤によって、粘膜細胞が傷害をうけるために生じます。口内炎の回復には時間を要します。吐き気と嘔吐は、抗がん剤が脳の嘔吐中枢を刺激し、また食道や胃の粘膜を傷つけるために起こります。各抗がん剤ともにアレルゲンとなることが多く、それにより薬剤性のアレルギー反応が生じます。抗がん剤治療で生じる下痢には、腸管の蠕動運動が活発になるものと、腸管の粘膜細胞が傷つき生じるもの、の2つのタイプがあります。特に、イリノテカンは激しい下痢を引き起こします。また、フルオロウラシルとの併用療法では、高頻度に下痢が生じます。便秘もまた、抗がん剤治療でよくみられる副作用です。便秘については、以下にて詳細にみていきます。

 抗がん剤治療の副作用としての便秘

  各種の抗がん剤治療で便秘が生じます。特に、便秘を起こしやすいのは、ビンクリスチン(オンコビン)などの植物アルカロイド系の抗がん剤です。ビンデシン、ビンブラスチン(エクザール)、ビノレルビン(ナベルビン)、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)などの抗がん剤でも便秘が起こります。タキソールやタキソテールは、さまざまながん治療で用いられる薬剤ですので、抗がん剤の副作用として便秘に苦しむ患者さんは非常に多いといえます。イリノテカンは、重度の下痢の後に便秘が生じ、難治性の麻痺性イレウスになることもあります。

 抗がん剤で便秘が生じる原因は、副作用としての末梢神経障害と自律神経障害が生じ、腸管の運動や腸内容物の運搬が妨げられるためです。薬剤の副作用で生じる便秘のことを医原性便秘といいます。抗がん剤治療で生じる便秘は、医原性便秘となります。抗がん剤治療で生じる便秘で問題となるのは、下剤では抗がん剤による医原性便秘をコントロールすることができないという点です。また、抗がん剤治療で便秘が生じますと、体内で役割を終えた抗がん剤の便への排泄が滞り、それにより役割を終えた抗がん剤が再度腸管から吸収されて、他の副作用が増強されます。腸閉塞に至らぬよう、日々の便秘対策や便秘予防がとても重要となります。

 胃がん、大腸がん、肝がん、胆嚢がん、膵臓がん、子宮がん、卵巣がんなどの治療では、がん臓器の摘出手術が行われることが多いです。今では、腹腔鏡による手術も行われますが、開腹手術も高頻度で行われます。腹の内部、つまり腹腔は空気中の酸素が乏しい環境にあり、がん組織の摘出のために開腹しますと、腸組織が外気(空気)に触れることになります。腸は、一度空気に触れますと、腸の動きが鈍くなる特性があります。開腹によって、腸の運動が抑制されるということになります。特に、胃がんや大腸がんで、がん組織の摘出が行われますと、腸の動きが抑制されて、そのため手術後に便秘が生じます。

 がん治療では、抗がん剤の直接的作用による副作用としての便秘が生じますが、それ以外にも抗がん剤治療による便秘が間接的に生じます。抗がん剤の副作用で発生頻度の高いものに、吐き気や嘔吐があります。抗がん剤で吐き気や嘔吐が起こりますと、食欲不振となって食事の摂取量が低下します。それにより排便に必要な便の形成が不十分となって、便秘が引き起こされます。抗がん剤の副作用として生じる吐き気や嘔吐を抑えるために、たびたび制吐剤が処方されます。カイトリル、ゾフラン、セロトーン、ナゼアなどの5-HT3受容体拮抗制吐剤が用いられますが、これらの制吐剤の服用は、便秘を引き起こします。これは、制吐剤で腸の蠕動運動が抑制されるためです。

 がんの自覚症状で最も辛いのは痛みです。がん治療では、がんそのものをターゲットとする抗がん剤治療が行われますが、同時に、がんによる痛みに対する治療も行われます。がんによる痛みは、頭痛や生理痛とは異なり、通常の鎮痛剤では効きません。そこで、最も鎮痛効果の高いオピオイド系鎮痛剤(モルヒネなど)がしばしば用いられます。しかし、オピオイド系鎮痛剤には、痛みを抑える作用があるのと同時に、小腸の運動を抑制し、また腸から分泌される腸液を減らす作用があり、このため便秘が高頻度で生じます。硬い便となって、排便困難となります。

 抗がん剤治療においては、がんを告知された患者さんにとっては、非常に精神的ストレスがかかります。主治医から、抗がん剤治療の説明を受ける中で、抗がん剤の副作用についても必ず説明があります。気を強く持って、抗がん剤治療を受けることができるのであればよいのですが、例えば、脱毛という副作用1つとってみても、特に、女性にとっては精神的なストレスを感じてしまいます。このようながん治療に臨むに際して、精神的なストレスは、並大抵なものではございません。このような精神的ストレスは、腸管運動にも影響し便秘が生じます。ストレス性便秘といわれるものです。

 以上のように、がん治療あるいは抗がん剤治療では、さまざまな要因で便秘が生じます。そのため、通常の下剤では、便秘をコントロールすることができません。特に、抗がん剤治療による便秘で重要なことは、先ずは便秘を生じさせないこと、つまり便秘の予防対策が第一義的な対策となります。当然のことながら、抗がん剤治療で生じてしまった便秘の改善も必要となります。下剤は、便秘の予防にはなりえません。では、抗がん剤治療に伴う便秘の対策は、どのようにしたらよいのでしょうか。以下に、抗がん剤治療に伴う便秘の改善策を提示します。

 抗がん剤治療又はがん治療に伴う便秘対策

  抗がん剤治療又はがん治療に伴う便秘のコントロールは、腸閉塞を予防するためにも非常に重要となります。便秘のコントロールは、単に生じてしまった便秘の対策に注視するのではなく、その予防も合わせて注視する必要があります。便秘の治療と予防を兼ね備えた対策が求められます。下剤や便秘薬は、便秘の治療に有効ですが、便秘の予防には用いることができません。

 抗がん剤治療又はがん治療に伴う便秘の対策は、治療と予防を兼ね備えた2つの側面が必要となります。この双方に効果的に作用するのが、野菜や根菜類に含まれる天然成分のイヌリン水溶性食物繊維です。イヌリン水溶性食物繊維は、水によく溶ける水溶性の食物繊維で、大腸内に生息するビフィズス菌酪酸菌、乳酸菌などの善玉菌の特異的な栄養源となります。イヌリン水溶性食物繊維は、大腸内の善玉菌を増やす作用があり、食欲不振で食事の摂取量が低下した時でも、便の量が増え排便を促します。また、ビフィズス菌などの善玉菌は、硬くなった便を軟らかくする効果があり、これによっても便秘が改善されます。イヌリン水溶性食物繊維は、抗がん剤治療やがん治療に伴う便秘の予防と治療の2つの側面に対して、効果的に働く天然成分となります。下剤や便秘薬にはない予防と治療の2つの機能を併せ持つ天然成分であるといえるでしょう。イヌリン水溶性食物繊維は、腸内環境を整える効果が高い天然成分ですが、腸内環境の改善は、体内免疫力の向上にもつながり、がん治療の効果を高めます。

 とはいえ、野菜や根菜類に含まれるイヌリン水溶性食物繊維の含有量は非常に少ないという欠点があります。従って、イヌリン水溶性食物繊維が含まれる野菜類や根菜類を摂取しても、便秘や自己免疫力を高める効果は期待できません。しかし、今では、スティムフローラのように、不純物を全く含まない極めて高純度のイヌリン水溶性食物繊維が、健康補助食品として市販されています。抗がん剤治療あるいはがん治療に伴う便秘の予防と治療に、このような健康補助食品を活用することも有用です。

 抗がん剤治療は、いわば副作用との戦いです。いかに、副作用を克服するかによって、抗がん剤治療の効果も変わります。抗がん剤治療による副作用は避けることができませんが、少しでも副作用を抑制することによって、抗がん治療の効果が上がります。

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