便秘の医学・その治療と予防

便秘は、家族や友人にも言えない症状です。便秘は、特に女性や高齢者に多くみられる症状ですが、便秘のことよく知らない人が多いです。そこで、さまざまな状況で生じる便秘についてお話します。

大腸がんの発症原因と便秘:便秘は大腸がんの原因となる!

近年、がん疾患の中でも、大腸がんが急激に増加しています。食習慣の欧米化が、増加する大腸がんの原因であるといわれていますが、食習慣の欧米化とは、食物繊維の摂取量の低下であり、これが大腸がん発症の原因であると考えられています。食物繊維の摂取量の低下は、腸内環境を悪化させ、病原性の腸内細菌(悪玉菌)を増やすこととなります。近年増加する大腸がんの発症原因について不明な点が多かったのですが、今では、大腸がんの発症原因としての腸内細菌の関与が注目されています。アメリカのジョーンズ・ホプキンス大学医学部の研究によれば、大腸がんは、全ての人に生息する腸内細菌であるバクテロイデス・フラギリス菌という腸内細菌が、大腸がんを発症させるというものです。フラギリス菌には、毒性成分を生成するタイプと毒性成分を生成しないタイプの2種類があり、毒性成分を産出するタイプのフラギリス菌は、下痢を引き起こし、大腸炎を引き起こして、さらには大腸ポリープをがん化して、大腸がんを発症させるというものです。便秘は、このような悪玉菌を増やす環境にあるといえます。つまり、便秘は、腸内の悪玉菌を増加させ、腸内環境を悪化させます。それにより、大腸がんの発症リスクが高まります。大腸がんの前がん状態である大腸ポリープの発症にも、腸内細菌が関与します。大腸がん及び大腸ポリープの外科治療では、大腸の一部組織を手術により摘出切除することになりますが、この外科治療の後に排便機能障害としての便秘が生じます。大腸がんの発症リスク要因としての便秘は、大腸がんの発症及び治療後の何れにも係る重大な症状であると認識することがとても重要となります。単に便秘とは考えず、日常的に便秘の対策が求められます。大腸がん、大腸ポリープ、あるいはそれらの疾患治療のために行われた手術後の便秘対策として、腸内環境の改善が、非常に重要となります。大腸がんあるいは大腸ポリープ発症の原因となる腸内環境の悪化を改善するのに有用な天然成分は、イヌリン水溶性食物繊維です。イヌリン水溶性食物繊維を摂取することによって、大腸がんあるいは大腸ポリープの予防が期待され、また大腸がん等の手術後に生じる便秘についても改善されます。イヌリン水溶性食物繊維は、ビフィズス菌酪酸菌あるいは乳酸菌などの善玉菌を特異的に増やす作用に優れ、これにより、大腸がんや大腸ポリープの発症原因となるフラギリス菌等の悪玉菌の増殖を抑えます。腸内環境の改善は、大腸がんの発症予防につながります。また、大腸がんの再発リスクも抑えることになります。ここでは、大腸がんの発症にかかわり、また大腸がん摘出手術後に生じる便秘についてお話します。

大腸がんと便秘

  広義の大腸臓器(長さ約2メートル)に分類される盲腸、結腸、直腸及び肛門に発生するがんを大腸がんといいます。その大腸を構成する大腸組織の中で、日本人の大腸がんは主にS状結腸と直腸にできやすいといわれています。S状結腸と直腸での大腸内容物は、水分がほとんど吸収され、排泄される便のように固化した状態にあります。便秘は、ちょうどS状結腸と直腸に便が滞留した状態にあります。このように、大腸がんの発生部位と便秘での便滞留部位は一致するため、大腸がんの発生原因に便秘が疑われることとなります。

 大腸がんには、大腸の粘膜細胞から生じる良性の大腸ポリープ(腺腫)ががん化して発生するものと、正常な粘膜細胞から直接発生するもの、の2つがあります。大腸粘膜細胞は、大腸内容物(便の原型)と直接接している細胞であり、便内容物に含まれる発がん性物質が大腸がんを発生させるとの学説があります。また、便内容物に含まれる特定の腸内細菌が大腸がんを発生させるとの報告も多くあります。大腸がんが、どのようなメカニズムで発生するのかについては不明な点が多いのですが、最近の研究によれば、特定の腸内細菌が大腸がんを発生させるとの学説が有力となっています。全ての人の大腸内に生息するバクテロイデス・フラギリス菌という腸内細菌が、大腸がんの発症に深く係っていることが報告されています。フラギリス菌には、毒素成分を分泌するタイプのものと、毒素成分を生成しないタイプの2種類があり、毒素成分を生成・分泌するタイプのフラギリス菌(悪玉菌)は、下痢を起こし、大腸炎を発症させ、さらには大腸ポリープをがん化して大腸がんを発症させるというものです。便秘では、いわゆる腸内細菌の悪玉菌が増えた状態となっていますので、大腸がんと便秘との関係においては、悪玉菌となる腸内細菌がその関係の中心にあるといえます。便秘は、大腸がん発症のリスク要因となり、腸内環境を整えること(善玉菌である乳酸菌、ビフィズス菌酪酸菌を増やすこと)が、大腸がんの予防とその進展抑止に有効であると考えられています。また、腸内環境の改善は、大腸がんの前癌状態である大腸ポリープの形成抑制にもつながります。

 大腸がんの早期では、特に自覚症状はありません。大腸がんが進行しますと、血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細くなる、残便感、腹部膨満感、腹痛、貧血や体重の減少などの症状が現れます。大腸がんでは、血便の頻度が高くなりますが、痔でも血便が生じるために、血便は大腸がん特有の症状とはならないことがあります。このように、大腸がんに特有の症状がないために、大腸がんであっても大腸がんとはなかなか気付かないことが多く、早期発見の障壁となっています。大腸検査は、一般化しつつありますが、検査前の腸内洗浄プログラムの苦しさ、肛門から造影剤注入のためのチューブの挿入における恥ずかしさ、造影剤の注入による排便刺激の辛さ等があるために、大腸検査を受けることに躊躇する人も多いのも事実です。近年、がん疾患の中でも大腸がんの増加がよく知られていますが、大腸がんの減少に結びつかない理由は、このような特徴のない症状や検査のあり方がその背景にあるものと思われます。

大腸がん手術後の便秘と排便障害

  大腸がんの治療には、外科手術、抗がん剤薬物療法放射線治療などがあります。どのように治療するのかについては、大腸がんの病期(ステージ)、年齢、合併症の有無などによって決定されます。大腸粘膜の表面に発症したがん細胞は、次第に大腸の壁に向かって深く侵入していきます。この病状の進行が拡大していきますと、リンパ節、肝臓、肺などにがん細胞が転移します。大腸がんのがん細胞が他の臓器や全身に転移した場合、外科治療は困難となりますので、抗がん剤を用いた薬物療法放射線療法が行われることとなります。他方、大腸がんの初期や転移の広がりが少ない場合には、外科治療が優先的に選択され、がんが発症している大腸の部分的切除が行われます。摘出される大腸組織の範囲及び同時に行われるリンパ節の摘出の範囲は、がんの発生した部位やがんの深さにより決定されます。大腸がん治療の多くに、大腸の部分的摘出が行われことになりますが、このような大腸がん手術後に、排便機能障害が伴うことが多いです。

 大腸がんの摘出切除術は開腹下で行われます。開腹下での手術では、腸と腸あるいは腸と腹壁との間で癒着が引き起こされます。癒着とは、臓器組織同士が接着することをいいます。このため手術後、食べた食べ物の腸管内での通過が悪くなり、腹部膨満感や嘔吐が生じることがあります。ひどい場合には、腸閉塞になることもあります。大腸がんを摘出切除した場合、腸と腸とを縫い合わせます。そのため、手術後縫い合わせたところを食べ物がうまく通らず、嘔気や便秘などの排便機能障害が生じます。

 盲腸からS状結腸までの間でがんが発生した場合には、直腸を温存することができますので、一般的に重度の排便機能障害は起こりません。しかし、便秘や嘔気などの一般的な腹部症状は生じます。盲腸からS状結腸までを全て摘出切除した場合には、便に含まれる水分を吸収することができなくなりますので、便は固形化せず下痢便となってしまいます。

 便を溜める直腸にがんが発生した直腸がんの場合、直腸の一部又は全部を摘出切除するために、便秘、頻便、便意の頻回、便失禁、下痢便などの排便機能障害が生じます。直腸がんで肛門が温存できる場合、摘出切除されずに残った直腸は、結腸と縫合されますので、結腸を通過した排泄物は、そのまま残った直腸に到達します。がんが肛門に近い部位に発生した場合には、温存される直腸は比較的多くなりますので、排便機能障害も軽度ですみます。がんが肛門の近くにあり、そのため肛門を温存することができない場合には、人工肛門が造設されます。最近の手術では、肛門をできるだけ温存する方法が採用され、肛門と結腸をつなぐことが多くなりましたが、この場合、便秘などの排便機能障害は強く現れます。

 手術直後は腸の機能は安定せず、便秘、下痢、頻便、便失禁などが引き起こされます。術後2週間以上経過しますと腸の働きも安定化し、排便回数は徐々に落ち着き、固形化した形のある便になっていきます。術後、次第に排便機能障害は回復していきますが、術前と同じ排便機能までは回復しない場合があり、例えば、慢性便秘になることもあります。大腸がんの摘出切除後の排便管理としては、食物繊維の多い食事を摂ることが、排便回数の減少につながります。その他、整腸剤や下剤の使用も有効とされていますが、大腸がんの摘出切除後の排便管理で最も大切なことは食事の管理となります。

大腸がん手術後の便秘対策

  大腸がんを摘出切除した場合、術後直後は主に下痢便が生じ、その後、排便回数の減少とともに便秘が現れます。大腸がんの術後の食事管理は、排便機能障害の軽減のみならず、がん再発の防止の観点からとても重要となります。大腸がんが再発する割合は、大腸がんのステージで異なりますが、一般にステージⅠでは4%、ステージⅡで13%、ステージⅢでは30%であるといわれています。再発した患者さんの80%は、手術から2年以内に再発がみられています。ですので、手術後5年間は、再発のリスク管理がとても重要となるのです。

 大腸がんの摘出切除術を行い退院後2週間は食事の量をやや減らし、1日あたり1,200キロカロリーを目安とします。大腸がんの術後は、消化機能が弱っていますので、食事の量も減らします。健康な時に食べた食事量の約6割を目安にするとよいでしょう。1日3回に分けて食事を摂るようにします。食事の内容は、炭水化物、蛋白質、脂肪、ビタミン、ミネラル等の各栄養素がバランスよく含まれたものとし、加熱調理することで消化のよいものとします。この時期、食物繊維は控えるようにいわれることがありますが、それは水に溶けないセルロースなどの不溶性食物繊維のことで、逆に水によく溶ける水溶性食物繊維は、術後の大腸に負担をかけることもなく、便秘などの排便機能障害をむしろ軽減しますので、積極的に摂ることが大切です。退院から1ヶ月が過ぎますと、徐々に食べる量も増えていきますが、食べ過ぎには注意が必要です。この時期は、便秘や下痢などの排便機能障害が強く現れる時期でもあり、整腸作用の優れた水溶性食物繊維を多く摂るように心がけます。退院後2ヶ月が過ぎますと、普段の食事が摂れるようになりますが、暴飲暴食、アルコール類や辛みのある刺激物を含む食事は避けるようにします。この時期になりますと、排便機能障害は、ほぼなくなりますが、慢性化した便秘が続くことがあります。食物繊維、特に大腸粘膜を刺激しない水溶性食物繊維は、退院後2ヶ月が過ぎましても、継続して積極的に摂ることが大切です。

 水溶性食物繊維にも多くの種類がありますが、便秘の改善や予防及び腸内環境を整えることに優れているのは、イヌリン食物繊維とよばれている水溶性食物繊維です。ゴボウ、タマネギ、ニンニク、アスパラなどの根菜類等に含まれる天然の食物繊維です。イヌリン水溶性食物繊維は、水によく溶けますので、セルロースなどの不溶性食物繊維とは異なり、大腸粘膜を刺激する作用はございません。また、水分で膨張化することもないので、腹部膨満感を与えない特徴があります。

 イヌリン水溶性食物繊維の最大の特徴は、善玉菌であるビフィズス菌酪酸菌や乳酸菌を特異的に増やす作用に優れていることです。大腸菌ウェルシュ菌などの悪玉菌は増やさず、善玉菌のみを増やします。オリゴ糖は、善玉菌を増やしますが、同時に悪玉菌も増やしてしまいますので、腸内環境の改善力はオリゴ糖よりもイヌリン水溶性食物繊維がより優れているといえます。イヌリン水溶性食物繊維を摂取しますと、腸内環境は大幅に改善され、大腸内の善玉菌が増えることによって、便秘などの排便機能障害が改善されます。また、それと同時に、腸内環境の改善により、大腸がんの再発予防効果も期待できることとなります。このように、イヌリン水溶性食物繊維は、大腸がんの摘出切除後の食事管理にとても有用なのですが、根菜類や野菜類に含まれる量がとても少ないという欠点もあります。しかし、今では、スティムフローラのように、不純物を全く含まない極めて高純度のイヌリン水溶性食物繊維が健康補助食品として市販されていますので、大腸がんの摘出切除後の食事管理に、このような健康補助食品を活用するのも有用です。

 大腸がん対策で重要なことは、早期発見・早期治療です。大腸検査は、とても辛くそのため検査を受けない方もおられるかもしれませんが、勇気を出して、積極的に大腸検査を受けるようにして下さい。また、大腸がんや大腸ポリープの発症予防に重要なことは、普段から、腸内環境の改善に努めることです。それには、ビフィズス菌などの善玉菌を特異的に増やす作用に優れたイヌリン水溶性食物繊維の摂取がとても有効となります。近年、大腸がんは増え続けていて、食事の欧米化がその原因であるといわれています。食事スタイルを変えることは、現代において容易ではございませんが、その中で、イヌリン水溶性食物繊維のような水溶性食物繊維を積極的にとりいれることがとても大切となります。

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水溶性食物繊維「スティムフローラ」

根菜類に含まれる貴重な天然成分であるイヌリン水溶性食物繊維は、腸内環境を改善し、自然な排便を促します。排便で苦痛を伴う方、お通じが毎日ない方、宿便気味の方、便が硬く排便が困難な方など、便の排泄にトラブルを抱えている方に、とても有用な天然成分です。スティムフローラは、この機能性の高い水溶性食物繊維を高純度(99%以上)に精製し、飲みやすいよう粒にした健康補助食品です。不純物を全く含まないので、病気により食事制限をしている方にも最適です。市販の食物繊維とは異なり、水に溶かさず、そのままお召し上がりいただけます。快適な、毎日のお通じのために!

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